スタート〜初めてスコアブックを買った日〜

1.雨の神宮

広告取りやミーティングなどで顔を合わせるうちに同期ともどんどん打ち解けていきました。
5月も半ばを過ぎる頃、再び同期何名かで集まって野球観戦@学生席。
皆でワイワイ言いながらの観戦。ここらへん、すっごく初々しく1女っぽいですね。こんなことできるのも今のうち。
まだ自分の大学の選手もよく知らなかったので(私にもこんな時代がありました)本屋で買った「大学野球」という雑誌を持って行きました。
当然、他の皆もそんなに詳しいわけではないので試合中その雑誌は大活躍。
「背番号○○って誰?」「何年生の人?」グラウンドの選手の背中と写真名鑑を見比べながら、少しずつ情報をインプット。
自分と同じ学部の人が出てると、勝手に親近感を覚えて応援してみたり。でも、これが学生野球のいいところ。

学生席は内野席の中でも外野寄りの方にあります。神宮に行ったことある方はわかると思いますが、プルペンにも近いです。
その日私たちは学生席でもブルペン寄りのところに座っていて、投球練習をしている投手たちの姿がよく見えました。
ふと気付くと、見慣れない背番号の選手が手前で投げています。背番号13…誰だろう。
気になって選手名鑑をめくったものの、「13」を着けた選手はそこには載っていません。
同じことを思ったらしいFが「ねぇねぇ、そこで投げてる13番って誰?」と聞いてきました。
「私も今気になって名鑑見てみたんだけど、載ってないんだよねー」「そうなんだ」
誰なんだろう。なんだか、わかんないままって気になる。
そこで、私はあろうことか、こんな仮説を打ちたててました。
「わかった!きっとこの14番の人が背番号変えたんじゃん?」…なんでやねん。

試合は翌日、3回戦へ突入。平日で、しかも雨模様。しかしこの日は母校にとって大切な試合。負けたら、優勝の可能性が消滅する。
何の力になれないとしても、応援したい。授業のない者で集まって、学生席へ。

球場はガラガラでした。平日でこの天気じゃ仕方ない。学生席も、応援部の人たちを除けば10人やそこらしかいなかったんじゃないかな。
最初は傘をさして見ていたのですが、雨はどんどん本降りになってきて、傘があってもあまり意味がない感じ。
試合は、6回にヒットとエラーで3点先制される展開。一方、打線は8回途中までノーヒットと、相手チームのエースに完全に抑え込まれる。
降り続く冷たい雨、淡々と進んでいく試合。勝ってほしいのに。

試合中、何回くらいのことだっただろう。突然「もういいや」と、私の中で何かが切れました。
雨が降り続く中、傘をとじる。もういらない。濡れたってかまわない。
学生席でもらった校歌・応援歌の歌詞カード。赤い紙に印刷されてたんだけど、雨に濡れてそこから赤い水がポタポタ垂れています。
文字通り、ずぶ濡れになりながら応援を続けました。

敗戦ムード濃厚で迎えた最終回の守備。投手交代が告げられ、マウンドに上がったのは昨日ブルペンで見た背番号13。
「ピッチャー、△△君に代わりまして、○○君。」謎の背番号13は、私たちと同じ1年生でした。
すごいや、同い年の選手がもう神宮で活躍してる…。
雨の中懸命に投げるその投手のフォームはとてもしなやかで、初めて誰かの投げる姿を「キレイ」だと思いました。

試合は結局そのまま敗れ、母校の優勝は消えました。
雨に濡れた寒さと、疲れと、空腹と。いろんな重たいものを引きずりながらの帰り道。
駅前のコージーコーナーに寄って、あったかいドリアをつつきながら、皆で今日の試合を振り返ってみたり。
負けて優勝がなくなったのは悔しいけど、あの13番のピッチングが心に残って、それが見れただけでも収穫だったかな…なんて思っていました。
後にこの選手には取材をさせてもらうことになるのですが、それはまた別の機会に。


2.「担当班どうするよ?」

5月も残り少なくなり、私たちの仮入部期間も終わりに近付いてきました。
野球の春季リーグ戦終了をめどに、いよいよ正式入部となります。
そこで、決めないといけないのが担当班。体育会の部は沢山あるので、スポの面々はそれぞれ担当を決め、取材を分担して行っています。

ウチの場合は、まず初めに野球担当かラグビー担当のどちらかに分かれます。
そのあと、さらに他のスポーツをいくつかずつ担当することになります。
いくつの競技を担当するかは、その年の入部者数次第。
入部した1年生が多ければ一人あたりの担当数は減り、少なければ増えるというわけ。
私たちの頃は一人当たり4〜5部担当だったのですが、最近は部員数が増えて一人当たり3つくらいになってるとか。
一度決めた担当班は基本的に引退時まで変わることはないです。
ただ、途中で辞める人などが出てきて、どうしても担当者数に偏りが出てくるところもあって。
各担当班のチーフが「人員補充が必要」と判断したときは春合宿の全体ミーティングで追加募集をかける場合もあります。
担当班が増えることはあっても減ることはないってことですね。

決めるときは、1年生に希望担当班調査表というのを書いてもらい、それを集めて最終的に編集長が決めるのですが…
編集長に言わせると、この担当班決めが一番頭の痛い仕事だそうです。
そりゃそうですよね、責任重大ですもん。1年生からしたら今後のスポ人生を左右する選択なわけだし、
また2・3年生からしても、(言葉は悪いが)「自分の担当班に優秀な人材が来るか?」は今後の取材活動において重要なポイントだし。

再び1年生の立場に戻って考えてみましょう。
もしあなたが「好きな競技を取材していいよ」と言われたとき、どんな競技を選びますか?
ほとんどの人は「自分が興味を持っている競技」や「これまでにプレーした経験のある競技」を選ぶんじゃないでしょうか。
多くの人が担当班を決めるポイントは「好きな競技だから」あるいは「中学・高校時代に部活でやってた競技だから」が中心になります。
年によって微妙に変化しますが、毎年サッカーや陸上はそういった理由で希望者が多いみたいです。

今もあるのかは不明ですが、私の頃は担当班を決める前に「担当班マニュアル」なる案内書が1年生に配られていました。
これは、各競技の開催時期や場所、募集予定人数、特に募集する人材(ルールに詳しい人とか写真が撮れる人とか)などをまとめたもの。
この紙を参考にして希望担当班を考えるわけですが…なかなか難しいんですよね。
開催時期というのが結構ネック。リーグ戦をやっている競技はほぼ確実に春・秋とも時期が重なります。
けど、もし重なった場合でも場所が近ければ取材ダブルヘッダーは可能なわけで。

あれこれ考えた末に希望する順に競技名を書いていくわけですが、必ずしもこの通りに希望が通るわけではないと思うと…
絶対この担当はやりたい!って思う競技もあれば、希望者多くて選外になったらまぁ仕方ないか…て弱気な(笑)競技もあるし。
でも私の場合一番不安だったのは「野球担当になれるか」でしたね。
基本的に野球・ラグビーの担当は本人の選択どおりになるらしいんですが、人数があまりにも偏ってる場合は調整するとも聞いていて。
自分の周りの女の子がほとんど野球希望だったんで、男女の人数バランスとって調整もありうるかなーと思いました。

希望調査表を出して、担当班が発表されるまではだいたい10日ほどでしょうか。不安と期待が入り混じります。


3.赤ペン先生の担当班発表

6月中旬。ついに、運命の担当班が発表されました。
編集長が一人一人名前を呼んで、前に提出しておいた担当班調査表を返します。
調査表に書かれた希望競技の一つずつに編集長の記した○や×がついていました。○は担当できる、×は選外ってことですね。
もらった紙を見て、ふと「テストの答案返却みたいだな」と思いました。○×は赤ペンでつけられていたし。
さながら編集長は“赤ペン先生”です(^^)

希望調査は、予備のために第8希望まで書いて出す方式でした。
8つ…今となっては全部は覚えていない(最後の方は正直適当に選んだ)のですが、とりあえず自分が特に担当したかった競技は○がついていました。
そしてそして、一番気がかりだった野球とラグビーの選択は…
無事、野球班に決定☆よかった〜!
私の担当競技は野球・バドミントン・合気道・射撃・体操・山岳・ワンダーフォーゲルとなりました。
(その後、欠員が出たため馬術も担当することに。)

私たちの代は、結局一人当たり5部ほどを担当することになりました(野球orラグビー+5部)。
他の同期もそれぞれ、だいたい希望する担当班に入れたようです。
特に仲の良かった子たちも揃って野球班に決定。皆で喜びました。

さて、担当班が決まって、私が最初にしたことは一体何でしょう?
実は、
スコアブックを買いに行ったんです。野球のスコアブック。
しかも担当班発表があったその日のうちにですよ。よっぽど野球班に入れたのが嬉しかったんですねー(笑)
学校の近くにスポーツ用品店があったので、同じ野球班に決まった子と一緒に買いに行きました。
行ってみるとスコアブックにもいろいろ種類があって、迷った挙句に一番安い物を購入(爆)
ウキウキして、先輩にも「早速スコアブック買いましたー♪」って報告。
そしたら、先輩は別の社のスコアブックを愛用してるとのこと。
「R社のやつで、他のと比べると少し大きいし高いんだけど、しっかりしてて書きやすいんだ」
そうなのか…
それを聞いてしまうと、なんかそっちの方がよく思えてきてしまうわけで。
結局、その後R社製スコアブックも買ってしまいました。確かに値段は少々高め★でも厚手でしっかりしてて確かに書きやすそうではあった。
最初に買った方は、秋のリーグ戦開幕までの練習用に使うことに。

担当班決定後すぐに、スコアのつけ方講習会が開かれました。
野球班の先輩たちが交代で、基本から教えてくれます。
記号や、表記の仕方の基礎を覚えたら、実際にスコアをつけてみます。教材は部室に置いてあるいろいろな試合のビデオ。
よく使われたのは、96年の東東京大会決勝・早稲田実業VS国士舘戦。
たまたま先輩が録画して持っていたものらしいのですが、結構もつれる試合展開で、スコアの練習にも適していたようです。

私の通っていた高校は、野球部はあったものの女子マネージャーを採用していませんでした。
そんな私にとって「スコアをつける」ということは高校時代からの小さな憧れであり、つけられるようになるのが目標でもありました。
だから、ついにスコアをつける機会に恵まれたということがとても嬉しかったのです。
講習会の後も、授業の空き時間などを利用してなるべく部室へ通い、自主的に練習を繰り返しました。
7月になったら高校野球のスコアつけのアルバイトもあるということで、絶対それまでにマスターしなきゃ!と思って。
人間、自分の好きな分野に関しては本当に驚くほど頑張れるものです。
学校でやるような普通の勉強はこんなに自主的かつ熱心にやらないのにね(笑)

そうそう、最初に買ったスコアブックは夏休みのうちにいろいろな試合を見て練習したので、8月が終わる前に使いきってしまいました。


担当班も決まり、正式にスポ部員として始動した私たち。
夏には、スポ的一大行事・スコバイもさっそく体験しました。→スポ的夏の風物詩・スコバイ体験記

9月になると、夏合宿に行きます。
それが終わるとスポーツの秋。取材でスポの面々が東奔西走する時期です。
若葉マークの私たちが初めて経験する、スポの秋。→若葉の頃



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