29日の観戦記その2。
第2試合は大阪ガス−三菱重工名古屋。 大ガスが一塁側だったので、一塁側に移動して観戦した。 大ガスの先発は初戦と同じくエース山田幸。 打線は多少入れ替えられた。前の試合、途中出場ながらホームランを放った野夫井が五番ライトでスタメン。 野夫井がライトに入ることで守備も多少変動。馬淵がスタメンから外れ、俣瀬がセンター、牧野がレフトという布陣。 大ガスの外野は3つのポジションを常時4人以上で争っているので、こういうのも決して珍しいことではないのだけれど。 そして初戦スタメンの中本に代わって補強選手の味園がファーストで出場。 これが私たち的には微妙に波紋を呼んだ。 私やYちゃんにとっては「味園=捕手」というイメージが強い。というかそのイメージしかない。(「野球」の鹿実ページ参照) 補強選手に選ばれたときは嬉しかったが、大ガスにも当然正捕手の小野がいるわけで。 初戦での味園の出番は最終回の代打だった。果たして次の試合ではどうなるんだろう…と思っていたが、まさかファーストで出場とは。 さらに、今日見に来た東は、高校時代から中本を応援している。 ところがその中本がスタメン落ち…。東にとってもやっぱりちょっと残念だったんじゃないかな。 |
![]() 波紋?を呼んだ大ガススタメン。 |
定刻14時にプレイボール。先攻は大ガス。 1回表。俣瀬がセンター前へ弾き返し、幸先のいいスタートを切ったかに見えた。 しかし二番田中のときに盗塁失敗。その後三番岩本のヒット、四番澤多が死球で二死一、二塁とするも、結局無得点。 その裏、山田幸の立ち上がり。先頭の沢井にいきなり四球を与える。 ん?と思う間もなく、二番増田が送りバントで一死二塁。三番東のセンターフライで二塁走者がタッチアップし二死三塁。 サクサクと塁を進められていく。そして、アクシデントは起きた。 四番亀山の打球は左中間へ。 俣瀬が背走して追う。…捕ったか!?と思うのと、俣瀬の体がフェンスに跳ね飛ばされたのが同時だった。 ボールがどこへ行ったのかわからなかった。捕ったかに見えた打球は、衝撃でグラブからこぼれていたらしい。 カバーに走って来ていたレフトが打球を処理したようだ。 私は走者がホームインしたことも、打った亀山が三塁まで進んだことにも気付かなかった。 フェンス際で倒れている俣瀬の姿しか目に入らなかった。 プレーが止められた。 倒れたままの俣瀬を、レフトの牧野が心配そうに見ている。 審判が走って行った。少し遅れて一塁側ベンチから、トレーナー(大会の救護担当?)らしき人も出てくる。 俣瀬はまだ動かない。 こういうとき人間の脳は無駄に働くもので、私の頭の中は負のパワー全開、悲観的な考えがぐるぐると高速渦巻き回転。 具体的にどれだけ悲観的なことを考えたかはここでは書かない。 ただ、外野でのその光景を見ながら自分が顔面蒼白になっていたであろうことは間違いない。 どれくらいの時間がかかっていたんだろう? しばらくして、俣瀬はようやく起き上がった。どうにか立ち上がり、元の守備位置へ戻った。どうやら無事のようだ。 私にとっては数十分のように思えたけど、実際は数分間の中断だったのだろう。 プレー再開後、五番池田はレフトフライで3アウト。しかしこの回、1−0と重工が先制。 他のメンバーより少し遅れて、俣瀬はゆっくりベンチに戻ってきた。 |
3回表、先頭の牧野がヒットで出塁。俣瀬が送り、田中がライト前へ運んで一死一、三塁。 ここで岩本がセンター前へタイムリーを放ち1−1の同点に。なおも一死一、三塁とチャンスは続く。 四番澤多。打球はライトへ。大きな当たりだがスタンドまでは届かず。 久々に豪快な一発が見たかったので思わず「あ〜」と言ってしまったが、これがきっちり犠飛となって2−1と逆転。 その裏、重工も即座に反撃。先頭の冨田がセーフティーバント。 山田幸が捕って一塁へ投げたが、送球がそれてベースタッチができずセーフ。 送りバントのあと二死二塁となって、三番東が三遊間を破るタイムリー。すぐさま同点に追いつかれた。 4回表、大ガスのこの回の攻撃は味園から。 打球はライト線に落ちた。味園は一塁キャンバスを回り、二塁へ向かう。 ボールが返ってくる。味園、ヘッドスライディング!判定はセーフ!! その走塁を見た瞬間、無性に「30歳、頑張ってるよ!!」と叫びたかった。 本当に。もうチームでもベテランの域でコーチ兼任だけど、まだまだ頑張ってる! 小野が送りバントを決め、味園は三塁へ進む。九番牧野は外野へ大きなフライを打ち上げた。 センターが捕る。味園がタッチアップ。三塁を蹴り、スライディングでホームイン。3−2と再び大ガスが勝ち越した。 ホームを踏んで立ち上がった味園は、次打者の俣瀬と片手で小さくハイタッチを交わしてベンチへ戻る。 「あ!」と思った。 それ自体は試合中によくある、別に珍しくも何ともない光景。 ただ、その光景の中にいるのが味園と俣瀬だということが私にとって重要だった。 91年夏、鹿実の一・二番コンビで甲子園を駆け回った彼ら。 卒業後、一人は社会人の強豪チームへ進み、もう一人は大学進学という道を選んだ。 味園の大学卒業後は、それぞれ阪和地区のチームでライバルとして戦ってきた。 高校卒業から12年。もう一度二人が同じユニホームを着ることになるとは誰が予想しただろう。 今までありそうでなかった偶然。この夏、この大会だけの幻のチームメート。 当人同士がこのことをどう思っているかは知らない。 けど、あの年の鹿実が大好きだった私にとっては、このハイタッチの光景が忘れられないものとなった。 味園と俣瀬が再びチームメートになった瞬間。たとえひと夏限りのものだとしても。 |
![]() 味園@バッターボックス。 …と言っても実は初戦で代打に立ったときの写真なんだけど(爆) ファーストでスタメン出場したこの日は3打数1安打。 ヘッドスライディングでのツーベースに、足から滑りこんでのホームイン。 ベテランの、そして補強選手としての意地を見せる。 |
大ガス先発の山田幸がどうもぴりっとしない。 味方が再び勝ち越した直後の4回裏、一死から六番佐々木にライトスタンドへソロホームランを叩き込まれる。 3−3。試合はまたふり出しに戻った。 ここまで打たれたヒットは3本。しかし実際はそれ以上に苦しんでいる感がある。明らかに調子は良くない。 そして5回裏、先頭の増田にツーベースを打たれ、一死三塁とされたところでついに監督がベンチを出た。 交代。左腕の田村がマウンドに上がった。 打席には先制のスリーベースを放っている亀山。 フルカウントからの勝負の球は、ライト線へ弾き返された。三塁走者が悠々ホームイン。亀山も二塁へ。 再び大ガスベンチが動く。田村をあきらめ、3人目の建山を投入。 建山は1四球を出すも後続を断ち、ピンチを切り抜けた。 しかしこの回、4−3と重工が逆転。 試合が動いたのはこの5回まで。以降は両チームの投手の踏ん張りでスコアボードに0が並ぶ。 建山は3回3分の2を無安打1四球に抑える素晴らしいピッチング。 実は彼のピッチングを見るのは今回が初めてだったんだけど、本当に安定していて良かった。 チームとしても今日の建山の好投は収穫だっただろう。 ただ、同時に「やっぱりこのチームは山田幸頼みなんだな」とも思った。 山田幸が早々とマウンドを降りる展開になったとき、それ以降試合をひっくり返す力がない。 例えば準優勝した3年前は、山田幸の後を受けた投手陣が流れを食い止められずその後も失点を重ねた。 いすゞ自動車と対戦した昨年は、終始流れをつかめないまま初戦敗退。 そして今年も、山田幸が降板した中盤以降は無得点に抑えられてしまった。 良くも悪くも、エースが試合の流れを握っている。 山田幸以外にも、流れを自軍に引き寄せる力を持った投手が出てきてほしい。 |
![]() エース・山田幸二郎。 良くも悪くも試合のカギを握る大黒柱。 この人が早々マウンドを降りてしまうと、 大ガスは苦しい戦いを強いられる。 |
あと1点が遠い… それは、序盤から思っていたことだった。 追いつくにしても勝ち越すにしても、あともう1点とれていれば突き放せたかもしれないのに、と思った。 山田幸の調子が良くないのもあったが、重工は粘り強く食らい付いてきた。 7回には一死一、二塁、そして8回にも一死一塁のチャンスを作ったがいずれも無得点。 重工の2番手・奥村にうまく抑えこまれてしまった。 9回表の攻撃は味園に代えて主将の峯岡が打席へ。しかし空振り三振で1アウト。 八番小野がレフトフライ、九番牧野もセカンドゴロ。最後はあっさり3人で終わってしまった。
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愛しの大ガス敗戦で力が抜けてしまった。 準優勝の翌年から、なんだかこんな風にコロっと負けてしまうことが多い気がする。 第3試合、ここしばらく見ていないNTT東日本もちょっと見たかったのだが、すっかり集中力が切れてしまったので帰ることにした。 見たいチームはまだいろいろあったけど、やっぱり今回も全ては見られないうちに終わった… 風圧の壁を通り抜け(ドームの回転扉を出るときは、中と外の気圧差?で突風に包まれながら押し出される感じ) 外へ出ると、曇り空でそう暑くもない天気だった。 寂しさと気だるさが混じった心を、かすかにぬるい空気が包み込む。 夏の終わりは、いつもそうやって過ぎて行く。 |
試合観戦記はこの日で終了です。
8月28日・29日の球場外での出来事は一つにまとめました。
こちらからどうぞ→8月28・29日 SIDE-B
各日の遠征記に載せきれなかった出来事や写真も、せっかくなんで公開。
→遠征こぼれ話