取材ノートから

初めての取材
スポに入部して初めて取材に行ったのは、合気道の試合。
高校時代、体育の選択授業で柔道・剣道・ダンスの中から迷わずダンスをとった私。
合気道どころか、武道そのものを全く知りません。
そんなズブの素人が試合見て、何かわかるのかな?取材なんてできる?と自分でも疑問で。
6月のとある日曜日。不安な気持ちを抱えて某大学の柔道場に向かいました。

初めて見る合気道。最初は何ひとつ分からなかったけど、見ていくうちになんとなく競技の雰囲気やルールもわかってきました。
ルールがわかってきたら当然もっと面白くなる。いつの間にか、手に汗を握りながら見ていました。
合気道は柔道のように体重別の階級があるわけではありません。
小柄な選手が自分より大きな相手に技を決める瞬間は見ていてあっぱれ!って感じです。

試合後、女子の団体戦で大将を務めたTさんのもとへ初めての取材に行きました。
ドキドキしながらTさんに声をかけて取材をお願いすると、
「え、そんな、取材だなんて恥ずかしい〜〜」と隣にいた人の陰に隠れてしまいました(^^;
恥ずかしがり屋のTさん、「一人で取材受けるの恥ずかしいから」と仲間に付き添ってもらいながらスタート。
なにやら不思議な雰囲気での取材になりました。
私も初取材なら、Tさんも取材を受けてしゃべるのは初めて。お互いに「初取材」でした。
緊張したけど、お互い初めて同士ということで逆に変に気を遣わずうまくいったかもしれないです。
Tさんのにこにこ可愛らしい笑顔が印象的でした。




何しに行ったの?遠征
夏休み、バドミントンの取材のために私たちも福島まで遠征しました。(ちなみにスポは取材地への交通費は毎回自腹です)
先輩2人とは現地集合。私は同じ1年のバド班Fと一緒の電車で行くことに。
都内を出て、初めて乗る路線にワクワク。と、途中までは良かったのですが…
2度目に乗り換えた駅だったと思います。次に乗る電車の発車ホームがわからなくなり、私たちは構内で迷子になってしまったのです。
やっとホームがわかったときには電車はとっくに発車した後。次の電車が来るのは30分くらい後(確か)。
ガーン…(ムンクの「叫び」の表情をイメージして下さい)
とりあえず遅れるという旨を先輩に伝えようと電話をかけるも、先輩のPHSにつながらない(><)
駅の公衆電話を握り締め「どうしよう…」と立ち尽くす2人。(まだ携帯が今ほど普及していなかった頃です)
そんなこんなで40分くらい遅れて現地に着きました。先輩2人を待たせる1年生(滝汗)
もうこの時点で先輩に合わせる顔がなくて、Uターンして東京帰りたいくらいだったんですけど。
そしてそれから会場へ向かったのですが、行ったらなんと!目的の試合が終わっていた…ゴーン←鐘の音
もうホントこの瞬間ほど逃げ帰りたいと思ったことはありません。東京どころか実家に一目散で!
明らかに私たちが遅れなかったら試合には間に合っていたはず…
すいませんすいません…

今は皆携帯を持ってるのがほぼ当たり前になり、こういった非常事態でも連絡はとりやすくなったと思います。
あと1、2年生まれるのが遅かったらなぁ…(苦笑)
それ以来、どこかへ行くときは「駅で迷うかもしれないから」と移動時間は多めに計算していくようになりました。
まぁ、計算しても連絡手段があっても道に迷えば結局一緒なんですけど(爆)
方向音痴なんですよ私…。

ちなみに、その日は福島にて一泊し、翌日の試合はちゃんと見て取材もできました(汗)




寒さとタバコ
某部の監督取材に行ったときのこと。
10月のある日曜日。練習試合が行われ、その後に取材の時間を頂きました。
練習試合はたいてい春・夏の休み中にやるはずなんですが、その年はなぜかぽつんと1試合だけ10月に予定が入っていました。
監督の取材だけでよかったのですが、せっかくだから練習試合も見ようとお昼からグラウンドへ。

夕方より少し前に試合が終わり、さあ取材だ…と思ったとき。
「ちょっと練習するから、もう少し待っててもらえる?」と言われました。
そこで今度は練習風景を見学することに。うん、普段あまり見れないものだから貴重な機会。最初はそう思って見ていました。

…待つこと何分…いや、何時間…?
辺りは真っ暗になって、グラウンドの選手たちの姿が見えづらくなっていました。
ナイター設備があるにはあるのですが、それでも暗い。普通に周りが見えない。
そして何より寒い!もう10月も中旬。夕方ともなるとかなり冷えるようになってきます。
しかも、夕方には帰れると思っていたから割と軽装で来ていたのです。
も〜、寒いし暗いしいつまでたっても練習終わんないし!

寒さで思考回路が停止しそうになってた頃、ようやく監督がこちらにやって来ました。
ようやく取材開始…
と思ったら監督、来るなり「寒いから、タバコを1本吸わせてもらっていいかい?」
そりゃ「ど、どうぞ…」としか言えないでしょ私たちは。
結局、監督がうまそうに一服するのを待ってから取材はスタートしたのでした。
寒さで思うように手が動かず、後から明るいところで見たノートには何やら象形文字のようなものが(笑)
自分でも読めないから当然家に帰ってから清書し直して使いました(><)

と、このように書くとずいぶんマイペースな監督に振り回されてるように見えますが、
私はこの監督が大好きでした。てゆーかこの一件で(むしろ↑の一言で)ファンになったと言っても過言ではない。
その後、監督は退任されましたが、今でも時々試合会場で姿をお見かけすると嬉しくなります。




嵐を呼ぶ座談会
ありそうで意外とないのが「座談会形式」の取材。
4人の選手についての記事を書く際に取材をお願いしたところ、4人一斉に座談会形式で話を聞くことになりました。
相手は全員4年生。1年生だった私は彼らの風格に圧倒されながら取材スタート。しかし…
質問の1問目から、トップバッターのSさんが沈黙してしまいいきなりパス!うそーん!!(結局最後に話してくれましたが)
Mさんは「え、お題は何でしたっけ?」と開始5分でテーマを忘れ、「高校時代の思い出についてです」と答えたら
「思い出とかけて…って、大喜利しなきゃいけないの?」…せんでええわ。
話してる途中にふっと目が合ったOさんがニヤリと笑ってきたので、つられて思わず噴き出す。
「なんで笑ってるんですか!」「いや、だってオレのこと凝視してくるからさぁ」これにつられて周りも爆笑。そんなことしてないよー!!
取材というか、おちょくられてるような気がする…

話は続き、今度はOさんがこちらに逆取材。「オレらって、どういう人に見える?」と4人それぞれの印象を聞かれ…
Sさんのことを「背の高い人だなーと…」と言ったら「まんまじゃねーか!」とツッコまれました。
Iさんには、同期の子が言ってた「男らしい」という感想を代弁したら、勘違いしたOさんが横から「好きみたいよ」と茶々を入れ…(汗)
違います、言ったのは私じゃありません〜!と言ったらそれはそれで「違うのかよ!」とまたツッコまれ…
Oさんのことを「いっぱい喋ってくれますよね」と言ったらなぜか嘆かれた。
「それはそっちが選手紹介で“試合後の饒舌ぶりも…”なんて書くから勝手にイメージ作られちゃってるんだよ!」
いや、明らかに事実だと思うんですが…。
で、Mさんについて…何て言おうかと一瞬考えたとき。
Oさんが核心をつく一言。「ていうか、Mのインタビューするのって、怖くない?」 …!!

スポ内では、Mさんは取材嫌いな選手として有名でした。
番記者も彼の取材に音を上げて、実は夏合宿のミーティングで担当変更の話もあったほど。結局交代はせずに秋に突入したのですが。
あまりにもストレートなOさんの発言に、その場にいた3年の先輩と私は「う゛っ」と言葉に詰まりました。
が、私の横にいた2年のFさんがポロッと言ってしまったのです。
「あ、(それ)よく言われてます」と。

「!!言っちゃったよー!」凍りつくスポ。しかしMさん以外の選手3人は大ウケ。
Oさんたちが「やっぱりねー」Mさん本人は「いや、それは違うんだって!誤解!」と必死で弁解。
Mさんは試合にすごく集中するタイプで、試合が終わってもすぐには切り替えられずその状態のままなんだそうです。
そういうときに声をかけられても「オイ、今話しかけてくんなよ」とか思っちゃうそうで、それが態度にも出るらしい。
「試合後すぐには集中を解けないからさぁ…」と言うMさんにOさんが「なんだよ、なんかカッコイイなぁそれ」と言ってました。
なるほどねー、そうだったんだー。
ちなみに、その後どさくさにまぎれて私とFさんが「じゃあ別に取材が嫌いで怒ってるんじゃなかったんですね」とか
「番記者が男だからあまりしゃべらないのかと思ってました」と本音をぶちまけていたのは秘密です(笑)

そんな感じで、座談会は嵐のような展開で過ぎ去って行きました。
OさんとMさんを中心に振り回されっぱなしの(でも一部では私がボケ倒していたという説も)約40分(長!)。
取材が終わり、4人が部屋を出て行った後、なぜか私以外の先輩たちがぐったりと疲れていました。

ここで書いたのは座談会の一部ですが、本当に色々と笑わせていただきました。と同時に笑われもしました。ええ。
4人の話を全て書きとるのは難しいだろうということでテレコ(テープレコーダー)を借りて持って行ったのですが
記事を書くときにテープ聞き直して、一言一句こぼさず露骨に会話が残ってることにかなりの恥ずかしさを覚えました…。
それ以来トラウマとなって、寮へ取材に行くときでもテレコは持って行かなくなりました(笑)




名前、書いて下さい
スポーツ推薦入試の取材に行ったときのこと。
この取材というのが、日曜の人気のないキャンパスで試験が終わるまでひたすら待ち、
出てきた受験者を一人ずつつかまえて話を聞くというある意味地道なもの。
試験中で建物の中には入れないので私たちはずっと外で待っています。
時期も時期だし(秋の終わり)この待ってる間が本当に寒くてつらい!
受験者は面接の終わった順に数人ずつバラバラに出てきます。最後の受験者が出てくる頃はもう夕方、日も暮れる頃。
取材していても、寒さで手がかじかんでうまく字が書けないんです。

一応スポ側もそれなりの人数で行っているのですが、受験者が集団で出てくると焦ります。
最後の方になって、一度に大人数で出て来ました。
慌てて走って行って「すいません、○○スポーツ新聞会と言いますが…」と集団の端っこにいた一人に声をかけたところ…
(…この人見たことある!)
TVや雑誌で見たことのある選手でした。その年の受験者でも指折りの知名度。もちろん実績も十分。
大物をつかまえてしまいました。ヤバイ、これは私じゃなくて先輩が取材した方がよかったんではなかろうか…

受験者には基本データとして名前と高校名、競技種目とその実績を最初に聞くのですが
私は彼の名前をすでに知っているので「…○○くん、ですよね?○○高校の」と確認だけする形に。なんかヘン。
競技種目も実績も知ってるので、そこらへんを聞くときは微妙におかしな雰囲気でした。
しかし、私はそこでさらにありえないことをしてしまったのです。
名前を確認したとき、「タツってどういう字ですか?」と聞いたところ「辰年の“辰”です」との答え。
が、私の頭にはその「辰年の“辰”」の字が浮かんでこない。
寒さで思考回路が固まっちゃってたんでしょう。
どれだけ考えても「竜」か「龍」しか思いつかない…ノート持ったまましばし沈黙。
やがて恥を忍んで彼にノートとペンを差し出し「すいません、わからないので書いて下さい…」
申し訳ない&恥ずかしい〜〜〜!!「コイツ大学生なのにこんな字もわからねーのか」って思われてたらどうしようー!
そして、取材を受ける側に取材ノート書いてもらってるって何よ(汗)
しかし彼は快く?名前を書いて教えてくれました。渡されたノート見てやっと「あ、辰ってこの字ね…」とわかった私。
その後、志望動機とか、受験勉強の話とか、合格したら(と仮定して)の今後の目標など…
自分のセールスポイントは?と聞いたら
「セールスポイントですか?…笑顔です(笑)」思わずこっちまで笑ってしまったじゃないか。
人懐っこい性格のようで、結構いろいろ話してくれました。

数日後にあった合格発表。彼は見事合格していました。
その年の合格者の目玉としてスポでも記事になり、私のとったコメントが一応役に立ったようです。
で、合格したらしたで気になったのが、あの日の「名前書いてもらった」事件。
もし今後顔を合わせたときに「あ、あのとき“辰”の字がわからなかった人だ」と思われてたら何かやだなーと思って(笑)

翌春、入学して2ヶ月足らずのうちに再び取材で彼に会いました。
相変わらず人懐っこく、サービス精神旺盛?でした。
新入部員紹介用に顔写真撮らせて下さい、と頼んだら「自分、営業用スマイルあるんですよ!」と言って満面の笑み!
あのとき言ってた「セールスポイントは笑顔」って、本当だったのね(笑)




馬車馬のように
取材で某部の寮におじゃましたときのこと。

その日の取材中、最初からずっと気になっていたのがイスの問題。
取材に使う応接室にはソファがあるのですが、ちょうど一人分、席が足りなかったんです。
イスが欲しい…。しかしそのことに気付いてもらえず、仕方ないので常時誰か一人が立っているというちょっとした罰ゲーム状態に。
何人か取材したところで、NさんとKくんがようやくそのことに気付いてくれて、パイプ椅子を持ってきてくれました。ありがとう(涙)
しかし2人がそれぞれ1脚ずつ持ってきてくれたため、今度は逆にイスが余ったという(笑)

複数の選手に取材をお願いし、都合のついた順に呼んでもらって話を聞いていたので結構時間がかかりました。
一人の選手の取材が終わると、その選手が「次は誰呼びます?」と別の選手を呼んで来てくれます。
Nくんへも取材をお願いしていたのですが、なかなかやってきません。
まだ練習中とのことで、他の選手から先に取材を進めて行きました。

取材はどんどん進み、新入生3人が顔写真撮影に来てくれたとき、その中の一人であるAくんに
「Nくんはまだですよね?」と聞いてみたところ、呼びに行ってくれました。これで次はNくん取材かな?
と思いきや、やっぱり来ない(爆)
夜9時を過ぎました。入稿期間中なので、帰って記事を早く書かねばならないし、皆夕食を食べてないので疲れ始めています。
9時半…まだ来る気配すらない。そろそろ本格的に雲行きが怪しくなって来ました。
遠方から来てる子は電車の時間も気になります。
応接室を出て、ラウンジでくつろいでた選手に「あの〜、Nくんはまだ練習中でしょうか…」と聞きに行きました。
すると、Mさんが「N?ああ、アイツ馬車馬のように練習してるから」。その言葉が妙にツボに入りました。馬車馬って(^^;
で、Nくん待ちでへろへろになってる私たちを見かねて、Kくんがグラウンドに電話してくれました。ありがとう〜!!
9時50分頃、満を持してNくん登場。
練習着は泥だらけで、腕の辺りだけガーッと洗ってきたらしく、石鹸の香りがしました(笑)
本当に一生懸命練習していたのがわかったし、あまりに堂々とした登場ぶりだったので何も言えず。
結局、取材を終えて寮を出たのは10時をとっくに回っていました。一体何時間滞在していたんだろ…
その日の夜、私は徹夜で記事を書く羽目になりました(爆)





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