8月26日(火) 遠征3日目 くもり、ところにより一時雨

「お願い、雨よ降らないで!」
前の晩から何度そう願っただろう。朝起きてカーテンを開けると、曇り空。降るか降らないかは相変わらず微妙。
テレビのチャンネルを頻繁に変えて、各局の天気予報をチェックする。
どこも同じ予報なのに、少しでも希望的観測をしてくれるところはないものかと探してしまう。
本日の天気、「曇りのち雨」。降水確率は午前中20%、午後から夕方までが50%、夕方以降が60%。
「昨日と変わってないじゃ〜ん!」ベッドの上で地団駄を踏む。


今日の予定は、お昼に後輩・
せつないと待ち合わせて東京ドームで一緒に都市対抗観戦。
夕方からは、神宮に移動してプロ野球のヤクルト−中日戦を見る。
…雨さえ降らなければ。

神宮では、Tも合流して一緒に見る予定。
「天候が不安定なため」(←神宮テレホンサービス風)まだチケットは買ってない。
けど、どうせなら少しでも安くで買いたいと思い、チケットショップで値段を見てみることにした。
せつないとの待ち合わせ時間より早めに行って、水道橋のチケットショップへ足を運んだ。

チケットショップではすぐに今日のヤクルト戦のチケットを発見した。内野指定がペアで2600円とかなり安い。お買い得!
But,シーズンシートチケットのため、雨などで中止となった場合払い戻しが利かないという。今日の天気ではかなりのリスクだ。
しかも、行くとしたら3人で行く(つもり)なのでペアでは意味がない。結局買わずに店を出た。
水道橋のベローチェでもう少し時間をつぶした後、待ち合わせのドーム22番ゲート前へ。



せつないと会ってすぐに、夕方からプロ野球を見に行きたいと話をする。
「いいですよ〜、行きましょう」とあっさりOK。
よかった。本当は昨日のうちに話しておけばよかったんだけど、言いそびれてたから不安だったんだ。
せつないは社会人野球を見にここへ来てるのに、「夕方からはプロ野球へ行こう」と誘うのはどうなの?とも思ってたし。
「じゃ、夕方までは都市対抗を満喫しますか!」ホッとしてドーム内へ。

中に入ると、第1試合の新日鐵広畑−日産自動車九州戦が7回に入ったところだった。
お客さんの入りもそう多くはなく(悲しいけど)ゆったりしてるので、せつないに好きな座席を選ばせる。
ネット裏、やや三塁側寄りのところに腰を下ろし、まったりと試合を見始める。
新日鐵の応援席を見ると、応援用のうちわがクマみたいな形してて可愛いと思った。
試合は3−1と日産九州がリード。8回裏、さらに3点を奪ってリードを広げる。
結局そのまま6−1で日産九州が勝利を収めた。

試合後の監督インタビューで「前主将の遺影も…」という話が出た。
日産九州の前主将、丸山豊揚(とよあき)さん。昨年11月、練習試合中に突然倒れ、6日後に帰らぬ人となった。
突然の仲間の死。9ヶ月が過ぎた今、残されたチームのメンバーはドームのグラウンドへ立っている。
9ヶ月は長かっただろうか、それともあっという間だったろうか。
今日の試合、ベンチには笑顔の丸山さんの写真が置かれ、常にナインを見守っていたという。



第2試合は三菱自動車岡崎−松下電器戦。
一昨年準優勝の岡崎と、昨年4強の松下の対戦。初戦で当たるのがもったいないような好カードだ。

14時プレイボール。
試合は初回に松下が2点を先制。岡崎は4回・6回に1点ずつ返して同点に追いつく。

91年あたりから高校野球を見始めた私。いまだに松下のスタメンの奥野・井上らの名前を見るとかしこまってしまう。
かつて甲子園でも活躍し、その後大学へ進学後も雑誌などで良く名前を目にしていた選手たち。
スター選手というか、自分とは別世界の「すごいお兄さんたち」という印象があるのだ。

4回途中から松下は丸尾が登板。「うぉー、丸尾だ!」と一人興奮する私。
丸尾英司という名前に聞き覚えのある人もいるのではないだろうか。オリックス−近鉄とプロ野球に在籍したことのある選手だ。
2001年から松下電器の一員となり、昨年は社会人野球のベストナインも受賞。今や松下投手陣の柱だ。
アマに復帰してすぐのスポニチ大会で、友人が丸尾の登板に興奮していたのを思い出した。
それ以来、なんだか私も丸尾が投げるのを見るとワクワクする。期待感というか。



試合を見ている途中、後輩の卑弥呼から電話が来て、今日の夕方に神宮で会うことに。
本当は一緒に神宮で観戦ができればと思ったのだけど、用事があるということで、試合前にちょっと立ち話程度になりそう。
それでも久々に会えることになってよかった。
17時に神宮で、と約束をした。電車の時間などを確認し、16時30分過ぎにドームを出ることに。
問題は、それまでに今見てる試合のカタがつくかどうか…
やっぱり、試合の決着がつかないうちに球場を出るのは不本意だもんね。

試合は終盤に動く。8回表、岡崎の攻撃。この回から登板の松下・山本が2四球を出し二死一、二塁。
七番の上出に代えて、代打・北村和。ライトへのタイムリーで、岡崎が勝ち越し!
続く松田、北村宏にもタイムリーが飛び出し、この回3点を挙げる。
「うーん、決まったかな…」時間もちょうど16時半を過ぎた頃。
「ごめんね、せっかく見に来たのに最後まで見ないうちに移動させちゃって」
ホント、せつないには悪いなぁと思いながら一緒にドームを出て水道橋駅へ向かう。さあ、次は神宮!



「天気、どうにか持ちそうですね」とせつないが言った。
17時半に現地集合の約束をしているTは昼過ぎの電話で「ウチの辺り今パラパラ降り出したよー」と言っていた。
ドームの中にいたから、自分のいる辺り(後楽園付近)はどうなってるのかわからない。
試合見ながらも時々、携帯で天気予報をチェックした。降水確率は朝から同じ数字のままだ。
ドームを出たとき、上空は相変わらず曇り空で、どっちつかずな感じ。
「お願い、あと数時間だけ、このまま持ってくれ〜!」祈るような気持ちとともに、電車はホームへと滑りこんだ。
信濃町の改札を出ると、心がはやる。
駅前の「ヤクルト歩道橋」(と、私は呼んでいる)を小走りで上って、緑の中を行く。懐かしい風景を行く。

神宮球場に着いた。外野側から入り、一塁側を通って正面へ向かう。
外野チケットボックスを通り過ぎるとヤクルトのクラブハウスがある。入り口付近には選手の出待ちをするファンの人たち。
その中を通り抜けようとしながら「あの“お弁当の人”、いますかねぇ?」と、せつないが言う。(注1)
「土橋〜?一軍にいるよ…って、あれ、土橋じゃん!!」
噂してたまさにその瞬間、クラブハウスから球場内へ入ろうとしてる土橋と三木に遭遇。
(注1:せつないは以前、スコバイ中に昼食を食べていたところ練習に来たヤクルトの選手に声をかけられたことがある。
記者席の窓越しに
「その弁当、うまいっスかぁ?」と聞いてきたのはいぶし銀プレイヤー・土橋だったらしい…笑)
しかし、土橋を間近で見たものの今ひとつピンときていない様子のせつない。
「あーそっか、せつないが見たとき、土橋まだ眼鏡かけてた頃だもんね」
視力矯正手術を受けた土橋は、トレードマークだった眼鏡を外したことで印象がだいぶ変わったのでわからなくても無理はない。
そんなこんなで、土橋・三木の球場入りを見届けて(?)球場正面へ。

まずはTの分まで3枚、チケットを購入しておかねば。代表して私が買いに行く。
「内野B指定を3枚」と言うと売り場のお姉さんが「それでしたら、ペアシートを2組買われた方がお得でおすすめですが」
「???」言ってることをよく理解できてない私にお姉さんは丁寧に説明してくれる。
「ペアシートは、2枚で通常のB指定1枚分のお値段なんです。それを2組買われたら、1枚余りますが通常の2名様の料金で3名様入れます」
と言われてもやっぱり今ひとつ理解できてない、数学の苦手な私。
「…要するに、お得なんですよね?じゃあ、それでお願いします。」
よく計算できないけど、まぁ姉さんが安いって言ってくれてるんだからいいや。「かしこまりましたー」とお姉さん。
「…あ!
できるだけ内野寄りの席でお願いしますねっ!」と無駄に念を押してみる私。「…内野寄りですね?わかりました」と姉さん。
チケットを買ってから辺りを見回してみるが、卑弥呼は近くに見当たらない。
電話してみるとベローチェにいるとのこと。「じゃ球場の方へ行きます」と卑弥呼。私たちもベローチェの方へ迎えに行くことにした。



ベローチェの前まで行くと、ちょうど卑弥呼が出てきたところだった。「久しぶり〜!」
その場でサンドイッチを買い、隣のエーピー(am/pm)で飲み物を買う。ついでにお菓子まで買う。食べ切れないのはわかってるけど。

せつないが「こっち(神宮)来てから、カヨさんなんかいつもとテンション違うんだってー」と卑弥呼に言ってる。
「うそ!?そうなの?なんだろ、何が違うのかな、何かヘン?」
「なんかもう、全部。さっき球場に向かう頃から…」
マジっすか。テンションおかしいっすか私。久々のヤクルト戦観戦だからかしら…て、あれ?
「!?」イヤな予感に慌ててカバンの中をあさる。
ない。チケットがない。さっき買ったばかりの、3人分のチケットが。
お、落ち着け私…さっき買って、すぐカバンに入れたはず…と思いカバンを引っかき回すけど、どこにもない。
血の気が引いていく。落とした?捨てた!?そんなバカな!
チケット3枚(正確には4枚)、ろ、ろくせんえん…ヒュー…←風の音(心の効果音)
「(も、もう一回3人分のチケット買い直し!?…)」ふるふる震えながら財布を開く。
「あー!」
黙りこくってた私に気付いたせつないと卑弥呼が「どうしたんですか?」と振り向いていた。
「い、今ね、私、チケットなくしたどうしようーと思って必死で探してて…そしたら、あったの!」
なんとチケットは思いっきり財布の中に入っていた。
「なにやってんですかー!動揺しすぎ!」「ほら、やっぱ今日おかしいでしょ?!」一斉に2人からツッコまれる。
いやもうホント、お騒がせしました。マジで血の気引いたってば。

Tとは球場の正面で17時半に約束していた。
「45分くらいまでなら大丈夫だから…」とギリギリまでいてくれる卑弥呼。
あれやこれやと話してるうちに、Tもやってきて、無事に卑弥呼との対面もできた。
「あー、私も一緒に見たいなぁ。せっかく4人も集まってるのに」と卑弥呼が言う。
「私だって、せっかくチケットも1枚余ってることだし卑弥呼とも一緒に見たかったけど、用事あるんじゃ仕方ないもんね。」
と、チケットが1枚余ってることを口にしてしまったのがいけなかったらしい。
卑弥呼が本気で神宮に残りたがり始めた。「どうしよっかな…」と用事ドタキャンを真剣に考え出してる。
最初は「ちゃんと行かなきゃダメだよー」と卑弥呼のために真っ当なことを言ってたはずのせつないが、いつの間にか
「思い切って今日はサボっちゃえ♪」とか悪魔のささやきをかけている(笑)こら、せつない!
試合開始が迫り、今日のスタメンと先発投手がアナウンスされるとますます卑弥呼の気持ちが揺らぎ始める。
「ダメだよ!卑弥呼の都合の邪魔するわけにいかないし!」
「野球はまた次の機会もあるから、そのときは一緒に見よう!ね!」
先輩として、いたずらに後輩の予定を狂わせるわけにはいかんのです。心を鬼にして卑弥呼を送り出す。
17時50分、秋にまた会おうと約束して卑弥呼と別れ、球場内へ入った。


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