大ガスが誇る偉大なバッター。
私に、社会人野球の打撃の魅力を教えてくれた人。


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それは毎年やって来るもので、選手権が終わってからずっと気になっていたこと。
気になりながら、聞く勇気を持てずにいたこと。
だけど、聞かずには新しいシーズンを迎えられないこともわかっていた。

そうしてようやく知った、今季限りで大ガス野球部に別れを告げる人たちの名前。
そこに、意外な名前があった。思わず目を疑った。

澤多さん。

ビックリして、3回は文面を読み直してみた。
けれど何回読んでも変わらない文字が、変わらない事実を告げる。
あの日の記憶が、急にグンと遠ざかっていってしまうような錯覚に陥った。

だって、ほんの一ヶ月前の話だよ?
日本選手権の初戦、四番打ってたじゃない。
同点ホームランを含む2安打。「あー、まだまだチームの主力だ。このチームには澤多さんが必要なんだ」って思ってたのに。


今年の夏、後進に道を譲る決意をして、都市対抗後に自ら退部を申し入れていたという。
ケガに苦しんでいたこと、それも理由の一つであると伝え聞いた。
そういえば去年の地方大会でも、グラウンドではなくスタンドで澤多さんを目にしたな…と思い出した。
自分自身でピリオドを打つと決めてから、この秋は一体どんな思いで戦っていたのだろう。

最後の大会となった選手権。初戦のJR北海道戦で同点ホームランを含む2安打と活躍しながら、負傷のため途中交代となった。
その影響からか、4日後の二回戦もスタメンを外れた。
出場はないまま、チームは終盤に逆転負けを喫する。
11月22日。大阪ガス野球部の2007年シーズンと、澤多さんの現役生活が幕を閉じた。


私が大ガスを応援し始めた頃から、澤多さんはずっとチームの主軸だった。
元々は、俣瀬さんや松尾さんを見る目的で足を運んだ東京ドームの外野席。
何気なく行ったその試合で、友達と二人、澤多さんのホームランに度肝を抜かれた。
それ以降大ガスにハマっていった理由の中には、澤多さんの打撃も多分に含まれている。
あれからもう7年が過ぎた。

クネクネとバットを揺らすように構える、特徴ある打法。
打球は時に鋭く、時にゆったり優雅に。でもいつも変わらない力強さを持って、スタンドへ消えていった。
選手権の初戦。
レフトへ伸びて行き、そのままスタンドへ跳ねた白球。
あれが、澤多さんの最後のホームラン。
永遠のように長く感じられた一瞬と、祈るように目で追った打球の軌道。
点が欲しい場面でしっかりと打ってくれたことが頼もしくて嬉しかった。
延長戦の末にようやく手にした白星の喜びと相まって、これからもきっと忘れることはないんだろうなと思う。


同じ阪和地区の、別チームのファンの方からこんな言葉ををかけてもらった。
「澤多さんは大ガスだけでなく、阪和が誇る偉大なバッターだ」と。
そんな偉大なバッターへ。
お疲れ様と、「ありがとう」と、これから先の新しい日々にも幸多きことを願って。



2007年12月27日